「ダイヤモンドは最も硬い石らしいから、どこかにぶつけた程度では割れないだろう」と、ダイヤモンドの硬さを信じている人は少なくありません。
確かに、ダイヤモンドは最も硬い宝石です。しかし、衝撃で割れ、欠ける危険性はあるもの。取り扱いには注意しなければなりません。
今回はダイヤモンドの硬さについて、その特徴を詳しく説明します。ダイヤモンドの特徴を把握して、正しく扱いましょう。
ダイヤモンドの硬さは『モース硬度』で表され、主に鉱物などのキズのつきにくさを示す尺度としてモース硬度が使われています。ダイヤモンドはモース硬度10と最高の硬さを持つ鉱物で、最もキズがつきにくい宝石として愛されてきました。キズがつきにくいのは、炭素原子が高密度で結合しているのが要因です。
モース硬度は、どのように測定するかご存じでしょうか。測定する鉱物と鉱物をこすり合わせて、「相手を傷つけた方が硬い」と判定して、10種類の鉱物の硬さを相対的に比較して数値を出すのです。ダイヤモンドは、他の鉱物とこすり合ったときに自分は傷つかず、相手を傷つけるため、「どの鉱物よりも硬い」と認められ、モース硬度10の鉱物として認定された経緯があります。
モース硬度は1から10まであり、硬い方から順番に並べると、以下のようになります。
10:ダイヤモンド
9:コランダム(サファイア、ルビー)
8:ベリル(エメラルド、アクアマリン、モルガナイト)
7:石英(水晶、アメシスト、シトリンなど)、ジェダイド(ヒスイ)
6:正長石(オーソクレーズ、ムーンストーン)、オパール、ターコイズ
5:リン灰石(アパタイト)
4:蛍石(フローライト)
3:方解石(カルサイト)、大理石
2:石こう、琥珀
1:滑石
財宝的・宝飾的な価値の高い『貴石』に分類されるダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドは、モース硬度がかなり硬い部類に入ります。その中でもダイヤモンドは、どの鉱物とこすり合わせても傷つかない、最高の硬さを誇る鉱物です。しかし、この方法だけでは、衝撃に対する強度がどの程度であるかは測定できません。衝撃に対する強度は、別の測定方法によって決められます。
モース硬度は、鉱物をお互いにこすり合わせて確認するものですが、衝撃に対する強度は、鉱物同士をぶつけ合うことで確認します。衝撃に対する耐性の尺度は『靭性』(じんせい)といい、ダイヤモンドの数値は7.5です。靭性が8であるルビーやサファイアなどのコランダムよりは低く、コランダムにぶつけると割れてしまうこともあります。靭性の高い順番を一部紹介しましょう。
ヒスイ
↓
コランダム(ルビー、サファイア)
↓
ダイヤモンド
↓
ペリドット
↓
エメラルド
ダイヤモンドよりも靭性が高い鉱物はヒスイやコランダムです。特にヒスイは全ての鉱物の中で最も割れにくい性質をもっています。その次がダイヤモンドで、以降、ペリドット、エメラルドと続きます。モース硬度と同じく、靭性の面からも、貴石は丈夫な鉱物なのだとわかります。
日常生活の中でも、ダイヤモンドの指輪を思いきり他のものにぶつけてしまうと割れる危険性があるので、注意しなくてはなりません。「一番硬い宝石だから壊れにくい」というわけではないのです。ダイヤモンドを査定するときも、割れや欠けがないかどうかはしっかり確認しておく必要があります。丁寧に取り扱い、衝撃を与えないように気をつけてください。
またダイヤモンドには、特定の方向に割れやすい『劈開性』(へきかいせい)という性質があるため、「力の加え方によっては割れてしまう」ということも知っておきましょう。ダイヤモンドの結晶は、炭素原子同士が緻密に結合している構造なのですが、結合力が弱い方向があり、ある一定の方向に割れることがあるのです。デメリットのようですが、これをメリットとして利用したのがカッティングです。
ダイヤモンドは、同じ硬さのダイヤモンドを用いてカットしますが、ある一定の方向に力を加えてカッティングと研磨をして、宝石としての価値を高めることができます。
現代では、ダイヤモンドの品質を決める「4C」のひとつにカッティングがあり、カッティングの良し悪しによってダイヤモンドの価値も左右されるようになりました。劈開性がなければ、単なるキズがつきにくい硬い石のままで、宝石として日の目を見ることがなかったかもしれませんね。
もう一度、ダイヤモンドの硬さに関する性質をおさらいしましょう。
・モース硬度10で、鉱物の中で最もキズつきにくい
・靭性7.5で、衝撃に対してはヒスイやルビー、サファイアより弱く、衝撃を与えると割れる可能性がある
・劈開性があり、一定の方向に力を加えると割れやすい
世界一硬い鉱物として知られるダイヤモンドも、「衝撃や、特定の方向からの力には弱い特性があり、割れやすい性質がある」ということを、基礎知識として覚えておきましょう。ダイヤモンドはぞんざいに扱わず、衝撃を与えないように取り扱いにはご注意ください。
お客様にダイヤモンドの扱いについて説明するときは、靭性や劈開性のことも話して、衝撃を与えないように注意喚起しましょう。ダイヤモンドの買取ビジネスを始める上で、何か疑問や困ったことがあれば、当社へお気軽にお問い合わせください。