金は株式や通貨と同様に市場で価値があるものとして扱われ、日々刻々と変動する相場の中で取引が行われている投資対象の一つです。
人類は紀元前から金を追い求めてきましたが、なぜ金にはそれだけの価値があるのでしょうか?
今回は、金の歴史や利用法の変遷を紹介することを通して、金の価値を解説していきます。
目次
金は世界で初めて貴金属として価値を認められた物質で、最古では紀元前6000年ごろに古代シュメール人が金を装飾品として用いたといわれています。
歴史上最も有名な金の装飾品に、古代エジプトのツタンカーメン王の黄金のマスクがあります。
当時のエジプトでは金は神が王にもたらした物質と考えられていて、一般市民は金のひとかけらさえ持つことを禁じられていました。
当時、金の採集には「砂金採り」の手法が採用されていました。
比重の違いを利用して大量の砂から砂金だけをより分けるのには大きな手間と時間がかかりますが、それでもエジプトでは膨大な量の金を集めることができました。
ツタンカーメン王が眠る柩には110キログラムもの金が用いられています。
現在のレートで換算すると時価は約5億円相当なのだそうです。
古代という枠組みではシュメール、エジプト以外にインカ帝国が金の歴史では有名です。
アンデス山脈を中心として広がっていた巨大なインカ帝国を支えたのも他ならぬ金の採掘でした。
インカ帝国を滅ぼしたスペインは5トンもの金を持ち帰り、そのことでインフレが発生し、国力を弱めることとなった、という説もあるほどです。
日本もかつては金を比較的多く産出する国として知られていました。現在では観光地になっている佐渡金山遺跡(国の史跡)にもその痕跡が残されています。
鎌倉時代、冒険家のマルコ・ポーロが著した「東方見聞録」で日本は「黄金の国、ジパング」として紹介されています。
ポーロ自身の体験談ではなく、奥州平泉の中尊寺金色堂の話や日宋貿易において日本側の支払いに金が使われていたことを聞いて「日本は黄金の国である」という伝説が生み出されたといわれています。
実は、日本では先の中尊寺金色堂や金閣寺など、装飾に金箔を用いた絢爛豪華な寺社仏閣が数多く存在します。
また、最古の金貨である開基勝宝(かいきしょうほう)をはじめに江戸時代の大判小判など金は貨幣としても流通していました。
もっとも、大判どころか小判でさえ庶民にはまず縁がなかったそうですが…
江戸時代の末期から明治時代にかけて近代的な紙幣制が整備されるようになったため、現代では通貨として金は用いられていません。
それでも記念硬貨として金貨はしばしば発行されていますし、金貨を含む記念硬貨を投資対象とするコイン投資なども存在します。
今でも金には貨幣としての利用法が残っているのです。
世界最大の経済大国アメリカでもかつて、一攫千金を狙う採掘者が殺到する「ゴールドラッシュ」が起こりました。
ゴールドラッシュ自体はアメリカ以外にも世界各地で発生していますが、一般的には1849年ごろにカリフォルニアで起こった出来事のことを指します。
ゴールドラッシュはアメリカに様々な影響をもたらしました。
皆さまはアメリカン・フットボールの49ers(フォーティナイナーズ)というチームをご存じでしょうか?
カリフォルニア州サンフランシスコを本拠地とする49ersのチーム名の由来は18「49」年にピークを迎えたゴールドラッシュといわれています。
ゴールドラッシュがアメリカに与えた影響の大きさが伺えるのではないでしょうか。
実際、ゴールドラッシュによりカリフォルニアの人口は急増し、それによりアメリカ西部の開拓が急激に進みました。
ただ、一攫千金を狙って集まった人々でしたが、実際に金を所有できたのは少数で、多くは低賃金で過酷な労働を強いられたそうです。
また、インディアンの部族が入植した白人によって根絶やしにされるなどの暗い歴史も忘れてはいけません。
ゴールドラッシュに由来したエピソードは数多くあります。
例えば、一般的なズボンは金を掘っているとすぐに破れてしまうため、その対策として生み出されたのが、現在ではカジュアルなファッションであるジーンズです。
発明者のリーバイ・ストラウスという名前を見れば、彼が現在のリーバイスの創業者であることは容易に見抜けてしまうのではないでしょうか。
ここまで古代から近代にかけて人類が金を求め続けてきた歴史を紹介しました。
金特有の輝きは人々の目を惹きつけてやまず、現代でも宝飾品やアクセサリーに多く利用されています。
金は通常錆びず、その輝きを永遠に保つことから古代では不老不死との関連も研究されていたほどです。
現代では、装飾用以外にも様々な用途で金が用いられます。
工学分野においては電気伝導体として活用されています。
金は電気抵抗が小さいため、コンピュータの回路や電子部品として有用です。
また、腐食への耐性が強いために電子部品のコネクタや伝導体の表面に金メッキを施すといった利用法もあります。
医学分野でも金は活用されています。世界ではセラミック素材などに置き換えられていますが、日本では金銀パラジウム合金を歯冠として保険適用内で利用できるため、歯科で金が使用されています。また、鍼治療用の鍼にも金を含む材質が使われることがあります。
そして、忘れることができないのが投資対象としての金です。
この先、金の産出は頭打ちになることが確実といわれています。
金に代わる物質が発見されない限り、金は今後、貴金属としての価値が上昇していくことでしょう。
このことから地金や金貨、金融商品といった形で金は投資対象として手堅く、将来も有望と見られています。
一方、海水や海底から金を効率よく抽出できるようになったり、金以外に有用な投資対象が登場したりすれば金の価値が下落することも考慮に入れておく必要はあるでしょう。
最近の動きでいえば、仮想通貨の登場によりにわかに金の相場が下落していることは注目に値するかもしれません。今後の推移を見守りたいところです。
いかがでしたでしょうか?
今回は、金の価値についてその歴史や利用法を通じて解説しました。
古代より世界各地で金は人々の注目を集め、日本でも主に装飾用や通貨として価値を見出されてきました。
現代では工業用や医療用など、様々な用途で金が利用されています。
投資対象としても手堅く、有望な金には今後も注目が集まるのではないでしょうか。